はじめに
学校や仕事場でメモを取るとき手書きでメモを取っていますか?、それともノートPCでキーボードを使った入力を行なっていますか?メモの取り方によって、メモの内容の記憶力、メモの内容の理解度が変わってきます。正しいメモの取り方を覚える事で、ビジネスや学習を効果的に行いましょう。
メモは生成的
手書きでメモを取る時に、ただ相手の言っていることを一言一句逃さずに書き写す、という事はしないと思います。そんなことをしていては、メモをする手が絶対に追いつきません。手書きでメモを取る時には、要約や言い換えといった生産的な処理を行なっています。
相手の話を聞きながら、手書きでメモを取った場合、メモ帳やノートに書かれている文字は自分の文字となっている筈です。生産的にメモを取る行為が、メモに対しての記憶や理解度がキーボードでメモを取った場合よりも向上する事が分かっています。
キーボードは逐語的
キーボードでメモを取る時、タイピングに慣れている人なら、比較的速いスピードでメモを取る事が出来ます。キーボードでの入力の速さが、相手の話す速度に追いつく事ができるために、相手の言葉を一言一句逃さずにメモする事が出来ます。キーボードでのメモは、相手の話を全て打ち込む事ができる為、逐語的なメモになります。
キーボードでメモを取った時、画面上に映っているメモの内容は、相手の言葉がそのまま書き写されています。手書きでメモを取った時のような、生産的な要約や言い換えが行われない為、手書きでメモを取った時に比べて、比較的浅い認知処理が行われます。よって、キーボードでのメモは記憶力や理解度が、手書きに比べて低下する事が分かっています。
TEDトークを用いた実験
2014年にUCLAの研究者によって15分ほどのTEDトークを題材に実験を行いました。講義を聞く学生を、キーボードでメモを取るグループと、手書きでメモを取るグループに分けて、講義の内容の記憶と理解度をテストして比較しました。
結果として、手書きでメモを取ったグループの方が、キーボードでメモを取ったグループに加えて、後のテストにおいて、記憶力・理解力共にいい成績を残しました。手書きで物事を書き留める事で、学習能力は格段に向上するようです。
キーボードで要約するように指示した場合
キーボード入力では、メモを取る行為が機械的な入力となってしまうようです。実験では、キーボードでのメモを、手書きのように要約して自分の言葉で書くように意識することを伝えた上で、キーボードでメモを取るグループと、手書きでメモを取るグループに分けて実験を行いました。
実験結果は、何も意識しないで機械的なキーボード入力をしていた時とほとんど変わりませんでした。被験者のメモを見た所、内容は若干の変化はありましたが、話の内容をただ逐語的にメモした形に近いものでした。キーボード入力をする際は、自分の言葉で書こうと意識しようとしても、タイピング上級者ほど反射的に機械的な入力に近い形になるようです。
手書きのメモは、概念関係と事実理解に効果的
2014年に行われた実験では、記憶や理解力だけではなく、どのような知識の獲得に適しているかも検証していました。検証された知識は、概念的知識と事実的知識です。手書きによるメモとキーボード入力によるメモ、メモの取り方で、学習に適した知識の傾向があるかも試されました。
概念的知識・事実的知識
概念的知識とは「思考・判断・表現」を通して学習する知識であり、「思考・判断・表現」を活用する知識です。例えば、数学の問題集などでは、通常模範解答が用意されていますが、数学は模範解答以外にも解法は無数に存在します。「どのようにすれば、問題を解くことが出来るか」と考えることが出来る事、これが概念的知識です。
反対に、事実的知識とは、数学の問題集の模範解答を丸覚えして、「覚えた方法なら解ける」と記憶することが、事実的知識です。
手書きメモの方が概念的知識・事実的知識、双方に優れている
実験結果では、手書きでメモを取った時の方が、キーボード入力でメモを取った時に比べて、概念的知識に対する理解度が上回りました。やはり内容を一度吸収して、自分の言葉として、アウトプットする要約・言い換えを行なっている手書きメモの方が概念的知識への理解は高まるようです。
しかし、事実的知識に関しては、手書きでのメモとキーボードでのメモの間にほとんど理解度に関する変化はありませんでした。手書きでのメモは特に概念的知識において、効果が高いようです。
メモの内容により、事実的知識の理解度が変化する
確かに、事実的知識に関しては、手書きのメモとキーボードで入力の間に大差はありませんでしたが、その後に、取ったメモを利用して同じ時間、二つのグループに復習をさせた時に、事実的知識に対する理解度には違いが出ました。
手書きのメモの方を使って勉強したグループの方が、事実的知識の理解度が高まりました。どうやら、キーボード入力で取ったメモは、文字の数量が手書きに比べ数倍に多く、短時間での学習を困難にさせたようです。手書きのメモは要点がまとまっている為に、短時間で事実的知識を学習することができました。
キーボード入力の利点
キーボード入力によるメモは、概念的知識・事実的意識の両方において、手書きのメモに比べて理解度が下回る結果になりましたが、キーボード入力にも利点はあります。
- 素早くメモを取ることが出来る
- 全ての言葉を書き取ることが可能
- データの為かさ張らず劣化しない
- 共有に便利
上記のように、キーボード入力にも利点があります。会議の議事録など単にデータを残したい場合はキーボードが圧倒的に効果的です。
最後に
・キーボード入力は逐語的
・手書きのメモはキーボードでのメモに比べて理解力、記憶力で勝る
・概念的知識、事実知識の学習は手書きのメモが効果的
・キーボード入力は議事録などデータを残したい時に効果的
学習をするにあったては、手書きのメモを利用する方がメリットが多いです。キーボード入力は手軽さがあるので、広く利用されていると思いますが、結果的には効率を下げているのかもしれません。メモの取り方を見直してみて下さい。
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