右脳派、左脳派なんて存在しない!?

KNOWLEDGE

人間の脳の働き

人間の脳の中には、1000億以上の神経細胞があり、数兆の通路により接続されています。神経細胞の働きにより私たちの思考は成り立っています。

脳の中でも特定の働きを持った二つの部位が存在します。それが右脳と左脳です。形自体は似ていますが、右脳と左脳の情報処理の方法は大きく異なっています。

両脳の情報処理能力の違いから、右脳派、左脳派という議論が生まれています。

不思議なことに、右脳と左脳は違う情報処理能力を持ちながら、独立しては機能しません。相互に何らかの干渉をしています。

右脳と左脳の機能分類

そもそも二つの派閥が生まれた原因は、1960年代にノーベル賞を受賞したRoger W. Sperry氏が発表した、右脳と左脳は別々の情報処理能力を持っているという論文からきています。

Roger W. Sperry氏の論文によると以下のように分類されます。

右脳
  • 想像力
  • 網羅的思考
  • 直感
  • 芸術
  • リズム
  • 非言語的
  • 感情的
  • 空想
左脳
  • 論理
  • 順序的
  • 線形思考
  • 数学
  • 事実
  • 言葉で考える

右脳と左脳の違いについて

芸術脳と言語脳の始まり

Roger W. Sperry氏が発表した、右脳と左脳の働きの違いによると、右脳は、想像力や直感、芸術などを司り、左脳は論理や言語、数学などを司ります。右脳は芸術脳で左脳派言語脳と言われるようになったのはこの論文が始まりです。

Roger W. Sperry氏の論文以降にも、右脳と左脳の働きの違いを示す論文はいくつも発表されています。多くの論文で右脳と左脳に処理能力の違いがあることが示されています

分離脳の実験

右脳と左脳の機能の違いを証明するために、Roger W. Sperry氏が行なった実験が分離脳と言われる実験です。分離脳の実験は、右脳と左脳を切り離すことで知覚能力はどのように変化するかを試したもので、結果から右脳と左脳に違いがあることはそもそも明白です。

右脳と左脳は脳梁と呼ばれる脳内の経路によって繋がれています。実験では、脳梁の一部が取り除かれました。結果、右脳がコントロールする左半身と左脳がコントロールする右半身とでは、別々の能力を示しました。

詳しくはこちらの記事で紹介しています。

右脳vs左脳:働きの違い
脳の働き方は、右脳派、左脳派によって違うという神話は、本当に存在するのか、2つの脳を比較検討します。 そこから分かる事実やオススメの職業などを紹介します。脳の構造についても触れています。

右脳派、左脳派なんて存在しない

天才達から見る右脳と左脳

右脳と左脳の働きに明確な違いがあることが分かります。同様に、能力にも右脳と左脳に準じた違いがあります。特に天才と呼ばれる人たちには、能力の違いが顕著に見られると思います。

簡単な例を出すと芸術家と呼ばれる人達は右脳派に分類できます。彼らは、右脳が得意とする視覚情報の処理を得意としています。芸術家は絵を描く前に、頭の中で大体の完成像を描くことができます。脳内に作られたイメージを絵を描くことで表現しています。

では、物理学者や数学者は右脳をを使わずに、左脳の論理的思考能力を駆使して、様々な問題を証明してきたのでしょうか?はっきり言ってそれは違います。天才と呼ばれる人達は、右脳と左脳を両方駆使しています。

アインシュタインはこう言っています。

「頭の中で絵を描くことができないなら何も考えることはできない」

数学や物理学についてアインシュタインが思考を巡らせる時、数式などではなく画像のイメージで思考をしていたのです。イメージでの思考は明らかに右脳の領域です。つまり、数字を扱うからといって、左脳だけが働くわけではないという事です。

右脳派と左脳派は癖があるだけ

右脳と左脳には、働きの違いがある事は確かです。しかし、何か脳内で処理を行うときに片方だけが使われるという事はりません。絵を描くときでも、数学の問題を解く時でも、常に右脳と左脳の両方を使っています。

では、なぜ右脳派と左脳派の派閥があるように見えるのか疑問に思うと思います。単に脳の使い方に癖があるだけです絵を描くのが得意という人はイメージ(右脳)を使って思考する癖がついていて、論理思考が得意という人は言葉(左脳)で考える癖がついています。

天才と呼ばれる人達は、二つの脳の使い分けが上手にできていて、必要な時に思考に適した領域を利用しています。天才とは、生まれながらに「脳」が違うのではなく、「脳」の使い方がうまい人達です。

脳の使い方の癖についてはこちらを参照

日本人に左脳派が多いのは、「日本語」に原因があるのでは
英語が苦手な日本人、その原因は「日本語」にあるかもしれません。読む言語である日本語は、左脳を使います。反対に、聴く言語である英語は、右脳を使います。そもそも使う脳の領域が違うのだから、日本人が英語を苦手とするのは当たり前のことなのです。

まとめ

要点のまとめ
  • 右脳と左脳には働きの違いがある。
  • 分離脳の実験で証明されている。
  • 右脳派、左脳派は脳の使い方の癖から生まれる
  • 天才は、右脳と左脳を的確に使い分けている

右脳と左脳の働きの違いから、右脳派・左脳派議論について触れてきました。結果から右脳派・左脳派なんてものは存在しません。ただ、人それぞれ脳の使い方に癖がある事は事実です。

癖を派閥とみれば、右脳派・左脳派と分ける事は可能でしょうが、健康な脳を持っていれば、誰でも平等に右脳と左脳の能力を発揮することができます。生まれつき脳の能力に違いがあるとの理由で、派閥という括りをする行為はあまり適切ではないでしょう。

 

コメント