記憶力が悪いのは、メカニズムを知らないから

KNOWLEDGE

はじめに

記憶力の良し悪しは、「記憶」について知っているかどうかで大きく変わります。記憶のメカニズムを知ることが出来れば、記憶術(どう記憶するか)を考え、実践することができます。自分には記憶力がないと諦める前に、記憶について学んでください。どうして自分に記憶力がないかが理解できます。

記憶をする時の基本的なプロセスは、記銘→保持→想起の順番に行われます。人の脳には、大概それぞれ癖があります。それぞれ、記銘に優れていたり、保持に優れていたり、想起に優れていたりします。

場面毎に状況を認識し臨機応変に行動できる人は記銘に優れているし、昔のことをよく思い出すことができる人は保持に優れているし、あまり視覚の隅に捉えたような意識して覚えていないことも思い出せる人は、想起に優れています。人それぞれ、自分に足りないと思う部分を鍛えることで、記憶力は高められます

記銘

記銘の作業は簡単に言えば覚える作業です。人が何かを覚えるときは、まず五感によって知覚をします。知覚された情報は海馬によって、関連付けされます。以前に記憶した事柄との比較が行われます。以前と関連していると判断された場合には、記憶は強く頭に残ります。

突拍子もない出来事や衝撃的な出来事ほど関連付けが強く行われ強く記憶に残ります。反対に脈絡のない出来事、ただ数字を暗記するなどは、関連付けが薄く記憶に残りにくいです。

記憶術で利用されるのは、関連付けを強くすることで記憶に残そうというのが一般的です。物語で物事を記憶したり、強い印象付ける結びづけを行うなどです。こうした基礎的な内容を理解しておくと記憶術を実践するにあたり理解がしやすいです。

記憶のラベリング

記銘される際、知覚情報は、主に三つにラベリングされます。

  • 音に関するラベル
  • 視覚に関するラベル
  • 触覚に関するラベル

人には知覚特性があるといいます。音に強のか、視覚に強いのかなどです。人それぞれ得意な知覚方法があるので、自分が強い知覚方法を確認して、インプットする際には、得意な知覚を利用することで記憶力が上がります。

保持

記憶は、短期記憶と長期記憶に分けられます。情報を保持できるかどうかは、短期記憶から長期記憶に移行できるかどうかにかかってきます。記憶は時間とともに忘れてしまいます。エビングハウスの忘却曲線が有名だと思います。

 出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 

時間と共に忘却される記憶ですが繰り返し使われる程長期記憶に移行しやすくされます。記憶を保持したければ、何度も同じ情報を知覚することです。適切な周期で記憶したい内容に目を触れることで、記憶を忘れにくくなります

記憶について、忘れてしまうという表現を使っていますが、正確に言うと思い出すことができなくなるという表現が正しいです。人間の脳は無期限に無限の容量を持っています。一度記憶した内容は脳の中に必ず残っています。短期記憶から長期記憶に移行するプロセスは、例えるなら脳内の図書館を整理する作業です。しっかりと整理された本はいつでも取り出す事ができますが、整理されずに放置された本は、どこにあるかが分からず取り出す事ができません。失われたも同然なのです。

想起

想起することは、記銘し保持された記憶を呼び起こす作業です。今まで説明してきましたが、想起するためには前の二つのプロセスが大事になってきます。感情など強い印象を付けられて記銘された記憶は、想起されやすい記憶になりますし、保持する段階で短期記憶から長期記憶に移行した記憶は想起が容易です。想起のプロセスは、まとめの段階だと考えてください。

想起する能力は、何度も思い出そうとする事で脳内の回路が作られて強化されます。なので、寝る前などに1日にあった事を思い出そうとすれば、必然的に想起力は鍛えられます。日記をつける事は想起力をつけるのには打って付けです。まずは日記をつけることから始めてみて下さい。小さい頃にやらされていたことには大抵意味がある事に気付かされます。

創造力

想起する事と創造力は深い結びつきがあります。記憶を想起するとき記憶の再構成が行われます。再構成される時に、記銘で説明した音、視覚、触覚などのラベリングなどの関連付けられた記憶から新たな知覚が生まれます、それがアイディアです。

記憶力を高める事は、創造力を豊かにする事につながります。全く別の分野からインスピーレーションを受けるというのは、想起のタイミングで記憶の再構成が行われることから生じます。記憶力を高めることで、新たな才能に目覚めるかもしれません。

最後に

記憶力を高めたい人は安易に記憶術に手を伸ばしがちですが、記憶術がどういった理論のもとに考えられたかを知っているかいないかでは、効果は大きく違っています。今回紹介した記憶のメカニズムは、記憶術を実践するにあたり最低限知っておくべき内容です。ぜひ記憶のメカニズムを理解してあなたの記憶力向上に役立てて下さい。

   参考:THE HUMAN MEMORY

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